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■ 歌舞伎町オーガナイザー

歌舞伎町「王」インタビュー

幅広い視野を持った優れたオーガナイザー

〜「オーガナイザー」とは〜
複雑な人間関係や企画をうまくまとめて運営する人(まとめ役)のこと

【取材・文】 歌舞伎町ペンクラブ

先頃、興味深い本が出版された。そのタイトルは 『歌舞伎町午前零時/女衒の夜』 (河出書房新社)。著者は武内晃一氏である。夜の世界に少しでも携わっている者ならば、その内容がどんなものであるのかと、好奇心を持つことだろう。

記者もその一人であった。

ネオンの妖光に彩られた歌舞伎町という街で生きてきた過程を赤裸々に語る著者の言葉には、説得力がある。そして、フーゾク界に生きる人間たちの性(さが)を見つめるその眼差しは、厳しく、そして暖かかった。

そんな武内氏に話を聞いてみた。

人と人とを結びつけることで仕事を生み出す。

−女衒を名乗るその理由を聞かせてください。

「本にも書いてありますが、他に適当な言葉がなかったんですよ。私の仕事は本来の女衒のそれとは違います。まあ、女性を扱うことが多いんで、それなら女衒という言葉を広義に解釈して、それを使ったんです」

うまくまとめるために、
全体をオーガナイズする人間が必要になる。
それが私なんです。

−では、実際にしている仕事というのはどういうものなんですか?

「私の仕事のやり方の基本は、人と人とを結びつけることで仕事を生み出すということです。それはフーゾク界でも芸能界でも、出版界でも変わりません。ある企画がある。でもその企画を実現するにはさまざまなハードルがある。人を集めることも簡単じゃないし、それに集めたとしてもそれぞれに思惑もあるしね。だからうまくまとめるために、全体をオーガナイズする人間が必要になる。それが私なんですよ」

−確かに女衒ではないですね。

「ええ(笑)。でもね、やっぱりオンナを手配するのは今でも得意なワケで。フーゾクに限った事じゃないですけどね。そういう意味では、女衒という側面もないことはない」


一見してフツーの人ではない。派手目のスーツにゴールドのアクセサリー。そのスジの人といわれても納得できそうな雰囲気を醸し出している。しかし、いったん話し出すと、その言葉は柔らかく、尖ったところがない。長年、競争の激しい歌舞伎町で生き抜いてきた男の自信と余裕の現れだろうか。

−フーゾク界とは今はどういう関わりを?

「いろいろな仕事をしてますけど、今でも私のベースはフーゾク界ですよ。店のプロデュースもしますし、フーゾク嬢の相談も受けてます。どうしたらもっと稼げるようになるか、とかね。ただ、オンナの手配が中心だった昔と違って、今は、これといった専門はないんです。いろいろな経験をしたおかげで、私に対する依頼が多様になった。それに対応するというのが今のスタンスですね」

−そういえばHPに「女性専用お悩み相談」や「アディクションカウンセリング」といったコンテンツがありますね。

「ずっと歌舞伎町で生きてきて思ったことは、やっぱりオンナが虐げられているってことなんですよ。男に騙されたり貢がされたりね。そうして人間不信になったり、場合によっては心が病んでしまったりするんです。もちろん本人に責任があるんですが、その原因は無知だったり、いい相談相手がいなかったりするところにあるんです。だから、少しでも彼女たちの力になれればと、そのコンテンツを立ち上げたんです」

−反応はどうですか?

「相談はかなりきてます。もっと条件のいい店はないですか、っていうムシのいい相談も多いですけどね」

−そんな時はどうするんですか?

「まあ、そういうのは相手にしません。真剣さが伝わるコのみです。それでまずは、フーゾク界で働くことの意味や心構えを教え込みます」

−それは何故ですか?

「フーゾクの世界は、何も考えなくてもなんとかやっていけてしまう世界なんですよ。でもそれでは、いずれ落とし穴に嵌ってしまう恐れがある。海千山千の猛者が待ちかまえているところですからね。考えないオンナは格好のカモです。そんなことにならないように、まずは自分の意志の在処をはっきりさせてやる。目的や目標を明確にしてあげる。そうすることでつまらない誘惑に乗らない姿勢を作ってあげるんですよ」

−どうしてそこまでするんですか?

「やっぱりオンナが好きなんでしょうね。だから出来るならつまずいて欲しくない。この世界に入ってくるオンナたちは、嵐に遭った船みたいなものです。どこに進んでいけばいいのかすらわからないことが多い。そんな彼女たちのための羅針盤になれればいいな、と思ってます」


生き馬の目を抜く、といった表現が決して誇張ではない夜の世界。それぞれがそれぞれの生を、貪欲にそして必死に営んでいる。時には他人を蹴落としてでも生き残ろうとするような厳しい世界である。

「まあ、簡単な世界でないことは確かですね。自分のためなら人を陥れることも平気なヤツが多いですから。でもね、オレは人との繋がりを大切してきた。だから今まで生き残れたんだと思いますよ。目先の利益に囚われて、他人を裏切り続けたヤツは遅かれ早かれこの世界から消えていきます。人の心を失ってしまっては、夜の世界とはいえ、生きてはいけないんですよ」


そしてそれは、オンナとの関わりも一緒だ、と氏はいう。

「フーゾク界での商品はオンナです。オンナのサービスを売って金にしている。それは事実です。しかし、だからといって自分の利益のためだけにオンナを売り買いしていたら、それは長くは続かない。オンナも考えるんです。というか、感じるのかな。信用できるかできないか、そういう勘は鋭いですよ。だから、オレは嘘をつきません。オンナには本当のことを言う。この仕事をすればこれくらい稼げるとか、こうすればもっと稼げるようになるか、とかね」


女たちの羅針盤。そう語る武内氏の目は、限りなく優しかった。
今のフーゾク界は社会的な認知度も上がり、この世界に飛び込んでくる女性も増えた。しかし、その一方で、そんな彼女たちを食い物にしようとする輩(やから)も増えているという。
だからこそ、氏のような人物が必要なのだろう。



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