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■ マンガ家・宮坂里美
  : バツイチ、シングルマザーにして現役歌舞伎町ホステス

【聞き手】 歌舞伎町オーガナイザー/武内晃一
【構 成】 伊達一心 (歌舞伎町ペンクラブ)
【アシスタント】 こけしchan

宮坂里美
 歌舞伎町は、多種多様な人間が集まる場所である。一旗揚げようと自ら望んでやってくる人間もいれば、そんな意志はなかったのに、まるで運命の糸に導かれるようにして歌舞伎町の住人になった人間もいる。反対に、嫌だけれど仕方なく、生きるために歌舞伎町を根城にしている人間もいることだろう。しかし、どんな人間でも、それぞれがそれぞれの居場所を見つけ、そしてそれぞれの人生を営んでいる。全ては、歌舞伎町の持つ懐の広さがそれを可能にしているのだ。猥雑で喧しく、決して清潔な街ではないかもしれない。しかしそこには、良くも悪くも圧倒的な人間の息吹がある。その息吹こそが魅力となり、またさら人間を呼び集めているのだろう。
 シングルマザー、クラブホステス、そして漫画家という三つの顔を持つ宮坂里美さんも、歌舞伎町の魅力を知る人間の一人である。彼女は望んでこの街にやってきたわけではない。やむを得ない事情があって歌舞伎町にやってきたのだ。しかし、この街でホステスとして働くようになって、次第にその面白さに気づいたという。
●宮坂里美プロフィール
1976年、石川県出身。高校卒業後漫画家を目指し上京。アシスタントを経て97年、ヤングジャンプにて『「Pro'ufail」プロフィル』でデビュー。2001年11月結婚、2002年4月に出産するが前夫のDVにより2004年3月に離婚。歌舞伎町や六本木のキャバクラを転々とし、2005年2月から現在まで歌舞伎町の高級クラブ「ルポベール」に在勤。現在はシングルマザーの現役ホステス漫画家として活躍中。

[雑誌掲載作品]
ヤングジャンプ 「天使385号」 「天使666号」
劇画マッドマックス 「マット界インサイドルポ」シリーズ
めっちゃ愉快な旅の話 「Welcome to歌舞伎町」
本当にあった爆笑先生の話 「現役クラブ嬢最低恋愛特集」

  

シングルマザー、クラブホステス、漫画家という三つの顔を持つ

武内
「宮坂さんの漫画家デビューは20歳の時だとお聞きしましたけど」

宮坂
「はい、そうです。高校を卒業してすぐ東京へ出てきて、ある漫画家さんのアシスタントをしてたんですね。それで仕事の合間に自分の作品も描いてたんで」

「その漫画家さんの口添えで?」

「いえ、持ち込みで、です」
(編集部注:デビュー作は『「Pro'ufail」プロフィル』集英社、ヤングジャンプ)

「それは凄いですね。順風満帆の漫画家デビューって感じですね」

「その時は、結構簡単なんだなあ、って思ったんですけどね」

「デビューした後はどんな感じだったんですか?」

「ちょこちょこ仕事が来るようになって、これならいけるかな、と思ってたんですけど、やっぱりそう甘いものではなかったですね。一年たったくらいから仕事もなくなっちゃって、原稿を持ち込んでも上手くいかなくて」

こけし
「どうやって食べてたんですか?」

「アシスタントは続けてましたから、それは大丈夫でした」

「それで25歳で結婚ですね」

「出来ちゃった結婚でした(笑)」

「結婚してからは漫画はやめてたんですか?」

「いえ、描いてましたよ。娘にオッパイあげながら(笑)」

「それで27歳で離婚するわけなんですけど、それはどうしてなんですか?」

「夫の暴力、つまりDVですね」

「あらら。結構酷かったんですか?」

「そうですねえ。我慢できないから離婚したわけですからね。あ、そうそう。面白い話があるんです」

「どんな話?」

「夫が、漫画で賞を取ったら何でもしてくれるって言うんですよ。でね、小さい賞なんですけど、本当に賞を貰っちゃったんです」

「それで、旦那さんには何をしてもらったんですか?」

「離婚です(笑)」

「あははは」

「まあ、その後すったもんだはありましたけど、無事離婚できました」

「ホステスになったのは、離婚が原因ですか?」

「そうですね。漫画だけでは食べていけませんでしたから。やっぱり、手っ取り早くお金を稼ぐには、夜の世界だと思いましたね。偶然、知り合いの知り合いにスカウトマンの方がいたんで、その人にお店を紹介してもらってホステスになりました」

「最初から歌舞伎町のクラブで?」

「いえ、結構あちこちで(笑)」

「歌舞伎町へはいつから?」

「去年の2月からですね」
(編集部注:宮坂さんは現在、クラブ「ルポベール」に在勤中)

「ホステスの仕事はどうですか?」

「それなりに楽しんでやってますよ。お客さんの繋がりで漫画の仕事も貰ったりしてますし」

「じゃあ、ホステス稼業の合間に漫画も描いてるって感じですか?」

「そうですね。おかげさまで漫画の仕事もちょっとずつ増えていってます」

「これから描こうと思ってるのはどういうものです? ホステスを題材にした漫画とか描くつもりはないんですか?」

「ありますよ。夜の世界の人間模様って面白いんです。男と女の駆け引きもありますしね。海千山千のお客さんの中で揉まれながら成長していくホステスさんの話なんか、いいかもしれないなあ、なんて思ってます。それとホステスさん3人くらいを主人公にした青春群像みたいなやつ。そんなのもいいかな、と」

「ネタはたくさん拾えそうですね」

「そうですね。そうやってホステスとして働きながら、漫画家としての引き出しを増やしていきたいですね。もちろん、ホステスの仕事もいい加減な気持ちじゃ出来ないですけど、やっぱり私の目線の先にあるのは漫画なんですよね。だから、その意味でも今は貴重な体験をさせてもらってる気がします」

「話は変わりますが、歌舞伎町って街はどうですか?」

「思ったより安全な街ですね。もっと怖い街かなあって思ってたんですけど、全然そんなことはなくて。居心地の良い街ですよ。ただ、みんな疲れてるなあ、と感じることが結構ありますね」

「それはお客さんがですか?」

「お客さんもですけど、従業員の方もホステスさんもですね」

「生存競争の厳しい街ですからね」

「そうですね。でももっと元気になってもらいたいですね」

「やっぱり活気があってこその歌舞伎町ですからね。私もそう思いますよ」

「はい」

「これからの歌舞伎町に望むことはありますか?」

「私はシングルマザーじゃないですか。その経験から言えば、もう少し託児所を増やしてもらいたいですね。子供を持っているホステスさんって結構いると思うんですよね。この街で働く女性は多いですから」

「少しずつ増えてるとは聞いてますけど、まだ足りないですか?」

「そうですね。料金も高いですしね」

「じゃあ、そういったテーマで漫画を描いてみてもいいですね」

「ええ。それも考えてます。載せてくれるところがあったらですけどね(笑)。重いテーマの作品ってなかなか載せてくれないんですよ」

「それなら好きなテーマで何でも描ける漫画家に漫画家になってください」

「はい、頑張ります」

「そうそう。歌舞伎町の夜をテーマにした漫画雑誌の企画があるんですけど、それが決まったら協力してくださいよ」

「もちろんです。是非お願いします」

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