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■ 理事長/影野臣直 : 作家・歌舞伎町ネゴシエーター

【聞き手】 歌舞伎町オーガナイザー/武内晃一
【構 成】 伊達一心 (歌舞伎町ペンクラブ)
【アシスタント】 こけしchan

影野臣直
撮影:石丸二丁
●影野臣直プロフィール
1959年、大阪府出身。大学入学のため、上京。歌舞伎町に出て、キャッチバーでバイトを始める。以後、ボッタクリ一筋20年。男女キャッチ併せ100有余名の、歌舞伎町最大のボッタクリチェーン、「Kグループ」を築き上げる。1999年、「梅酒一杯15万円」事件で逮捕。懲役4年6ヶ月の実刑判決を受け、新潟刑務所に服役。2000年11月、『ぼったくり防止条例』施行により、グループ解散。2002年、刑期を一年残し、仮出獄。以後、裏社会の幅広い人脈を生かし、歌舞伎町ネゴシエーターとして活躍。現在は作家に転身。裏社会コーディネーターとして、「表社会と裏社会の融合」を目指す。

[著書一覧]
『実録ボッタクリ商売』(シーズ情報出版)
『歌舞伎町ネゴシエーター』(河出書房新社)
『刑務所(ムショ)で泣くヤツ、笑うヤツ』(河出書房新社)
『プリズン・ダイエット』(環健出版社)‥2007年12月中旬発売予定

[連載]
実話マッドマックス「影野臣直の一語一会・川柳組」
劇画マッドマックス「ネゴシェートDAYS」

[趣味]
ゴルフ、野球、“エアロビクス”、フィギュア収集、鉄道模型(ミニクラブ・メルクリン社製のみ)

[特技]
パソコン、囲碁、“花占い”、“お菓子作り”

歌舞伎町のトップランナー

武内
「まず、経歴を教えてください。ボッタクリの帝王と呼ばれるようになるまでどんな経緯があったんですか?」

影野
「大阪から大学入学で東京に出てきたんだけど、歌舞伎町でキャッチバーのバイトを始めたのがきっかけですね。それから二十年、ずっとボッタクリ人生でしたよ」

「その間、ボッタクリチェーン店まで作ってますよね」

「ええ。店舗数は5店舗で、全部ボッタクリの店。キャッチ(注・言葉巧みに客を店に連れてくる人)は最盛期で100人は超えてましたね」

こけし
「100人以上って・・・。すごい規模ですね」

「それくらい羽振りが良かったってことですよ」

「そういうグループがあるのは聞いてましたけど、まさか影野さんがその首謀者だとはね(笑)」

「それまでとは違ったボッタクリのノウハウを作り上げたって聞きましたけど、それはどんなものなんですか?」

「それまでのボッタクリというのは、コワモテのいかつい男が出てきて、支払いを渋る客を脅す、ってのが主流だったんですけど、それだと明らかに脅迫でしょ。それだとリスクが大きすぎるんですよ。店を維持していく上ではね」

「警察の目?」

「そうです。だから、そのリスクを少しでも減らすために別の方法を考えたんです。それにね、昔ながらの方法でやるには、パンチパーマもかけなきゃならないし、スーツも着なきゃいけない。そういう仕掛けが必要なんですよ。僕的にはそんなの嫌だったってのもありますね(笑)」

「その別の方法というのはどんな?」

「簡単に言えば、店側の権利を主張しながら交渉して、お金を払ってもらうという方法です」

「具体的には?」

「この店の経費は月に300万かかる。そうすると、1日10万は稼がなくちゃならない。今日の客は貴方一人なんだから、10万円請求しなきゃならないんですよ。まあ、値段を設定する権利は、店にあるんだから、お願いしますよ。もしもっと大きな店で、お客さんもたくさん入るようなら、いくらでも料金を安くできるんだけど、見たとおり、ウチはこんな小さな店舗で経営してる弱小店なんですよ。それでも食うためには、店を潰せない。そのためには従業員や女の子(ホステス)に給料払って、家賃や光熱費も払わなきゃならない。こっちだって楽じゃないんです。払ってくださいよ。と、こういう交渉をするんです」

「脅しじゃなくて、交渉術で払わせる、ってことですね」

「そうですね。それでもやっぱり、警察から目はつけられますよね」

「目をつけられたらどうするんですか?」

「チェックされてる店は畳んで、名前を変えて、場所も変えて新しく店を出すんです。1年で11回引っ越したこともありますよ(笑)」

「11回ですか〜。大変ですね〜」

「だから、いつも次の物件を探してましたよ。ここがダメになったら、あそこ。その次はここ、って具合にしておいて、無駄な時間を作らないようにしてましたね」

「そこまでしてもやっぱり(笑)」

「1999年でしたね、逮捕されちゃったのは・・・。それで懲役4年6ヶ月の実刑判決受けて服役です」

「『ぼったくり防止条例』が出来たのも、影野さんがきっかけだったとか」

「そうですねえ。従来のボッタクリだと、その罪状は強盗、あるいは恐喝なんですが、僕のやり方だと恐喝なんだか詐欺なんだかよくわからない。それで警察から、面倒なんで『ぼったくり防止条例』が出来たんだ、って言われましたね」

「法律まで作らせちゃったんだから凄い(笑)。で、まあ、刑期を一年残して仮出所される訳ですけど、どうして作家の道へ?」

「出所した後は歌舞伎町でネゴシエーター、つまりあらゆるトラブルの解決を円滑に進めるための交渉人みたいなことをしてたんですけど、ある時、神峻さん(ライター兼映像・出版プランナー、歌舞伎町ペンクラブにも参加している)から、影野さんも書いてみてくださいよ、書ける人なんだからさ、なんて言われてね。真剣に言ってくれるもんだから、その気になって書いてみたんですよ。それを河出書房新社の編集者、太田美穂さんに見てもらったら、“これは行ける”ということになって。それで一気に書き上げたんです」

「それが『歌舞伎町ネゴシエーター』(河出書房新社)ですね」

「そうです」

「結構売れましたよね。歌舞伎町では相当話題になったし」

「おかげさまで(笑)」

「その後、『刑務所(ムショ)で泣くヤツ、笑うヤツ』(河出書房新社)、それで年内にも『DIET PRISON(ダイエット プリズン) 』(環健出版社)の発売が決まってます。順風満帆な作家生活のスタートですね」

「いや、そんなこともないですよ。まだまだです」

「最新作はどんな内容なんですか?」

「僕の刑務所経験から生み出したダイエット法を書いた本なんですよ。23キロ痩せましたからね」

「痩せるためのノウハウが満載ってことですね」

「僕のやり方なら絶対に痩せられます。まあ、細かいことは詳しく本に書いてありますから、是非、買って読んでみてください」

「せっかくですから、もっと宣伝しても構いませんよ(笑)」

「いや、こんなもんで(笑)」

「ところで現在はどんな活動をしてるんですか?」

「単行本を執筆しながらですが、雑誌とかにもいろいろ書いてますよ。裏モノ系の雑誌が多いですけどね」

「読者からの相談にも答えてるんですよね」

「そうです。トラブル解決のためのネゴシエート相談なんですけどね。そういう相談に、自分の実体験を交えながら答えてます」

「実体験を元にしての回答なんて、説得力ありそうですね」

「いろいろ経験してますからね(笑)」

「他には何かありますか?」

「相変わらず、歌舞伎町でネゴシエーター業もしてますし、本を書いてるお陰で、面白い企画も持ち込まれるんですよ。ダイエット・プランナーになってください、とかね」

「じゃあ結構忙しい日々を送ってるってことですね」

「ありがたいことにね」

明るい裏社会の創設を目指す

「話は変わりますが、今の風俗界をどう思いますか?」

「実はね、ひとつ危惧してることがあるんですよ」

「どんなことです?」

「宅配型のサービスが合法化されましたよね」

「ああ、いわゆるデリヘルってやつですね」

「そうです。でもあれはこれからの風俗界を考えると、あまりいいとは思えないんですよ。あれは危ないですよ」

「どういうことですか?」

「何のチェックもなく、女の子を客のところに送り込むワケでしょ? その客が酔っていて理性的な行動が取れない場合だってあるはずです。あるいは、精神的に病んでいたりする客がいる可能性だってゼロではない。つまり、女の子の安全が、完全には担保されない」

「確かにそうですね」

「それとね、これは実際によくある話なんですけど、客が酔っているせいで、自分のモノが勃たない。それなのにそれを女の責任にして金を払わない、といったトラブルが多いんです。もし、店舗型の店だったら、あまりにも泥酔している客や、明らかに危険な客は排除できるでしょ? 派遣型はそれが出来ない。どうしても行き当たりばったりの賭けになっちゃうんです。これは業者や女の子、あるいは客の問題ではなく、形態の問題なんです。だから、そんな形態を許しちゃいけないと思うんですけどね。悪法だと思いますよ、僕は」

「そんな法律を作るくらいなら、売春を合法化した方がいいですよね(笑)」

「その通りですね。風俗業全体を法律の管理下に置きたいなら、売春合法化しかない。合法化した上で細かい規制をすればいいんですよ」

「その意見には賛成ですね。合法化してなんでもオープンにすれば、客だって安心して遊べるし、そこで働く女たちだって、安全に働けるんですからね」

「キャッチの問題もそうなんですよ。売春の合法化と同時に、キャッチも合法にする。店の前だけでやるとか、正確な情報だけを客に伝えるとか、そういった規制をつけてね。そうすれば、問題はないはずです。彼らは、正直言って社会に適応できない人間なんです。そんな彼らの生きる場所を奪っちゃいけないんですよ。行き場のなくなった人間は怖いですよ。何をするかわかりません。だから、そんな人間たちの逃げ場はちゃんと用意しておかなくちゃいけない。それが成熟した社会だと、僕は思ってます。武内さんもそう思うでしょ?」

「そうですね。働く女の子の側から考えても、彼女たちにとって風俗界ってのは数少ない生きる場所なんですよね。だから私も、もっと働く環境を整備してあげたいと思ってるんです。そのためには、どうしても売春合法化は必要だと考えてます。違法だからこそ、地下に潜って営業するような店が出来ちゃう。そして不当に搾取されたり、劣悪な環境で働かなくてはならなかったりする女の子が出て来ちゃうんです」

「性犯罪だって減ると思いますよ。もっとオープンになって、より社会的な認知度が高まれば、店の数も、サービスの種類も増えるだろうしね。そうすれば、自分の性癖を満足させるためには犯罪に走るしかなかった連中も、風俗店で充足できるようになるだろうしね」

「全く同感ですね」

「影野さんはこれからも執筆活動を続けられると思うんですが、今後はどんなものを目指していくんですか?」

「最も重要視しているのが、『明るい裏社会』の創設。表社会と裏社会の融合ですね。本当なら、その二つの社会が、完全に一つになることが理想なんですが、それは現実的には難しい。そう簡単な話じゃないですからね。だから当面は、表社会と裏社会を繋ぐ、コーディネーターとしての役割り的な活動をしようと。そしていずれは表社会とか、裏社会とかと、区別されないような社会になるよう、その旗振り役を、微力ながらやっていきたいと思ってます」

「歌舞伎町のトップランナーとして、これからもどんどん活躍してください。今日はありがとうございました」

「お互いに頑張りましょう(笑)」

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